医療法人社団 英正会
小見川ひまわりクリニック
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眼瞼けいれん

概要

眼瞼けいれんは、目の周りの筋肉が過度にはたらくことから、自分の意図に反して目が閉じてしまう病気を指します。名前から想像されるような「ぴくぴくした動き」を伴うわけではなく、目が閉じる、というものが言葉の定義に含まれており、いわば瞬きを自分でコントロールできなくなってしまった状態です。

眼瞼けいれんは、脳の大脳基底核に関連した病気であると推定されています。多くは40歳以上の女性が多く発症し、睡眠薬や抗不安薬などの内服などがあると発症年齢が早まると報告されています。眼瞼けいれんにかかっている方の正確な数字は不明ですが、診断されていない方も含めると日本では30〜50万人以上ではないかと推測されています。

眼瞼けいれんでは、ボツリヌス毒素の局所注射を筆頭に遮光眼鏡、内服薬、手術的などの治療介入が行われます。眼瞼けいれんでは、目が勝手に閉じる、ということから機能的な失明に陥る可能性があるため、日常生活への影響が強く懸念されています。

原因

眼瞼けいれんでは、眼の回りに存在する「眼輪筋」と呼ばれる筋肉を中心に、自分自身の意図とは関係なく間欠的、もしくは持続的に筋肉が収縮するために、目が勝手に閉じてしまいます。特に、神経学的・眼科的な異常を原因として伴わないものを本態性眼瞼けいれんと呼びますが、以下では特に注釈がない限り、本態性眼瞼けいれんの内容について記載しています。

眼瞼けいれんの原因は、付随意運動(自分自身の意図とは関係ない動き)が生じる局所ジストニアと呼ばれる範疇の運動障害です。ジストニアが発生することと関連して、眼瞼けいれんは脳の大脳基底核と呼ばれる部位に関連した病気であると推定されています。

大脳基底核は、意図的な運動制御に関連にとても重要なはたらきを示すことが知られており、小脳や視床、視覚中枢など、広範囲に中枢神経系と協調的に連絡を取り合っています。眼瞼けいれんでは、こうした連絡網が破綻してしまっており、結果として眼瞼運動を調整する運動に異常が生じていると考えられています。

症状

眼瞼けいれんの初発症状は、瞬きが増える瞬目増多や光が眩しいといった羞明感などが多いです。瞬きが増えるということは眼瞼周囲の筋肉が自分の意志と無関係に収縮していることを反映しています。

瞬目増多が進行すると断続的に目が閉じるようになり、歩行中に人やものにぶつかる、転倒するなど外傷リスクが上昇するため、自転車に乗るのが怖い、車の運転中に危険を感じた、といった日常生活における支障を覚える方も多いです。目を閉じているほうが楽なこともあります。

羞明感は、特に明るい場所で自覚することが多く、まぶしさを軽減するためにサングラスをかける方が楽である方も多いです。また目が乾く、といった症状を認めることもあるため、ドライアイと間違えられることもあります。
 

検査・診断

眼瞼けいれんでは自覚症状に加えて、眉毛が下方向に向いている、側頭部などを抑えると目が開けやすくなる、などといった所見も診断の参考になります。
眼瞼けいれんでは、速い瞬きをするように促したり、力強い瞬きを繰り返させたりすることで症状が誘発されることがあります。こうした検査を速瞬テストや強瞬テストといい、診断の参考にします。

その他、筋電図検査を行うことで、詳細にどの筋肉が異常収縮を来しているのかを判定することが可能です。通常のCT、MRIといった画像検査では形態学的な異常を同定することができませんが、ポジトロンCT、functional MRIなどといった特殊な画像検査で異常を同定できることもあります。さらに、ビデオ眼振計といった検査が行われることもあります。
 

治療

眼瞼けいれんでは、過度の睡眠薬や抗不安薬などの薬剤が誘因となっていることもあるため、必要に応じて誘因薬剤の調整を行うことになります。
眼瞼けいれんの治療介入としては、ボツリヌス毒素の局所注射を筆頭に遮光眼鏡、内服薬、手術的などが行われます。ボツリヌス毒素を投与することで、異常な筋肉収縮が抑制されることになり、目が閉じてしまうという症状軽減を期待できます。治療効果を考慮して第一選択として位置付けられる方法ではありますが、根本的に眼瞼けいれんを治療する方法ではなく、数か月ごとに注射を行う必要もあります。

また、眼瞼けいれんでは光がまぶしいという訴えをすることがあるため、光を遮光する遮光眼鏡が使用されることもあります。臨床経過によっては、抗てんかん薬や抗不安薬、抗痙縮薬、選択的セロトニン再取込み阻害薬などといった内服薬が適応になることもあります。

いずれの方法も根本的に眼瞼けいれんを治療するわけではなく、あくまでも対症療法的な役割になります。眼瞼けいれんでは日常生活に支障を来すことがあるため、適切な治療方法を選択しつつ、生活スタイルの調整を行うことも大切です。